【海外のヤングケアラー当事者の話①】”全ての子供が親のお世話をしていると思っていた”
BBC NEWS “Young carer: ‘I thought every child looked after their mum'” (2018.9.23) より
22歳(当時)のルーシーさんは、幼いときから統合失調感情障害と二分脊椎を患う母のケアと、妹のお世話を担っていました。
遊ぶ時間も、友人と過ごす時間も、単なる子供としていられる時間も十分に存在しない毎日。
常に母親のケアをしている様子を見て、学校の友人たちは”mummy’s girl(ママっ子)”と呼んで、彼女をからかいました。
しかしルーシーは、自身の生活が他の子どもと異なるものだとは思ってもおらず、友人も同じように幼い時から親のケアをしていると信じ込んでいました。
それゆえ、たとえバカにされても、「自分よりも他の子どもの方がもっと上手く親のお世話をしているのだろう」と考えていたと言います。
彼女は学校の先生にも、自らのケア役割についての話はしませんでした。
学業との両立について、彼女はこのように語っています。
「私は何度も学校に遅刻しました。でも、私の先生はそれをそこまで気にしていませんでした。だって私は、とても熱心に学業に取り組んでいたから。」
過酷なケア役割から、学校にも遅刻せざるを得ない状況が続いていた彼女でしたが、その事実を周囲の大人たちに知られないようにするために、あえて宿題などは完璧にこなし、優秀な成績を収めていました。
「母と妹は、私の全て。そのため、母が入院をしてしまったり、私や妹がその介護をせざるを得なくなったりするのが、とても怖かったです。」
そんな生活を続けていたものの、彼女が17歳になったとき、ついに我慢の限界に達し、役所から受けられる支援を探し始めました。
そのときにヤングケアラーとしてのサポートが受けられることを知り、実際の支援サービスとつながることができました。
その後彼女は、様々な機関からの支援もあり、優秀な成績を収めて大学を卒業し、数学の学位を取得します。
「他の人たちが本当に私を助けてくれるのかと疑っていましたが、彼らの支援は私の人生を変え、なりたかった私になることができました。」
彼女は今、自分と同じ状況にある若者についての認知が増加することを目指して、定期的に自らのケア経験に関する講演を行っています。